日本の金融庁の本音は、個人投資家保護よりも国内FX店頭取引業者の経営安定化を望んでいる?

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レバレッジ10倍規制を巡る有識者検討会報告書が公表された!

2018年6月13日付けで「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」の最終報告書が公表されました。

結論からいうと、今回はレバレッジ10倍規制の導入は見送られました。

その代わり、国内FX業者の自己資本・ストレステストの拡充などの対応策が導入されそうですね。

では、さっそく、有識者検討会報告書の概要をみてみましょう。

 

レバレッジ10倍規制の本音は、システミックリスク回避のためのFX業者の倒産防止が目的

店頭FX業者決済リスク対応に関する有識者検討会の問題意識

今回、レバレッジ10倍規制の導入を検討していたのは、
「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」です。

会の名称が示すとおり、個人投資家保護を目的とした検討会ではなく、
国内FX業者の決済リスク(顧客からの追証回収リスク等)への対応を検討することが目的ですね。

では、なぜ、金融庁が国内FX業者の決済リスクに着目した検討会を開催したのかというと…

  • 店頭FX取引市場については、リーマン・ショック以降の国際的な金融規制の対象ではないものの、年間取引規模が近年5,000兆円程度まで拡大
  • 店頭FX業者の決済リスク管理を不十分なままにしておけば、外国為替市場や金融システムにも影響を及ぼし、システミックリスクに繋がる可能性

引用元:金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要より

簡単に言うと、5,000兆円規模の店頭FX取引市場を担う国内FX業者が相場急変で破たんすると、
他の金融システムに次々と影響が波及するリスクがあるから、国内FX業者を破たんさせない対策を検討しようことですね。

そのための方法のひとつとして、レバレッジを10倍程度に引き下げることで、
個人投資家が差し入れる必要証拠金を引き上げて、国内FX業者の追証回収リスクを減らすことが検討されたわけです。

 

店頭FX業者の決済リスク管理の強化に向けた対応策(2018年6月13日付)

2018年2月から6回にわたって開催された検討会の結論は下記のようです。

気になる証拠金率の引き上げ(レバレッジ10倍規制)は見送りになりました。

まずは、国内FX業者の自己資本・ストレステスト拡充して、その効果を評価したうえで、必要に応じて再度検討することになりました。

自己資本・ストレステストの拡充

  • ストレステストの厳格化等

顧客未収金及びカバー取引先破たんリスクは、日中最大建玉残高を勘案した算出に変更

顧客未収金は、控除する証拠金を契約上必要な証拠金に変更

カバー取引先破たんリスクは、G-SIFIsのリスクも適性に勘案

  • ストレステストの結果への対応

自己資本が十分でない業者は、当局が自己資本の積増し、

又は証拠金率の引き上げ等を通じたリスク量の削減を求める

引用元:金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要より

少し補足すると、G-SIFIsというのは、グローバルにシステム上重要な金融機関(G-SIFIs)として特定したされた29行のことを言います。

具体的には、Bank of America、Bank of China、Bank of New York Mellon、Banque Populaire CdE、Barclays、BNP Paribas、Citigroup、Commerzbank、Credit Suisse、Deutsche Bank、Dexia、Goldman Sachs、Group Credit Agricole、HSBC、ING Bank、JP Morgan Chase、Lloyds Banking Group、Mitsubishi UFJ FG、Mizuho FG、Morgan Stanley、Nordea、Royal Bank of Scotland、Santander、Societe Generale、State Street、Sumitomo Mitsui FG、UBS、Unicredit Group、Wells Fargoです。

バンカメ、モルガン、HSBCなどは、日本でもなじみがある名前ですよね。

日本の金融機関では、三菱東京UFJや三井住友、みずほなどの名前もありますね。

従来は、G-SIFIsの場合、カバー取引先破綻リスクは一律0%としてきたけど、各金融機関の実情に応じてリスクを計量しましょうということですね。

このほか、この概要には記載されていませんが、リスク削減のための清算機関の活用も業界に検討させたいようですね。

 

取引データの報告制度導入

日々の取引データを金融先物取引業協会及び当局に報告させることで、不公正取引の防止および決済リスク管理強化をはかる

引用元:金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要より

報告内容として、米国の例に倣って、
約定遅延度合いやスリッページの頻度等も含めることが提言されています。

 

その他の施策

ロスカット取引に係る監視間隔の短縮

ロスカット制度に係る監視間隔は、常時監視を含め1分以内で監視を行う業者が大半を占めるので、
現行自主規制枠の5分超10分以内となっているので、この間隔を縮めることが適当だという意見のようですね。

未カバーポジションの情報開示 等

国内FX業者がカバー取引を行わずに自己で抱える未カバーポジションは、経営方針によっては、上限額が1,000億円を超える水準になっている業者もある。

相場急変の場合、店頭FX業者の決済リスクの観点から、
未カバーポジションの保有業者に対し、情報開示や適切なリスク管理を求めるのが適当だという意見のようですね。

引用元:金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書の概要より

このほか、相場急変時の対応として…

一部の店頭FX業者は、重大な政治・経済イベント前に顧客の保有建玉上限の引き下げや、証拠金率の引き上げなどを導入している。

これは、相場急変によりリスクが高くなる可能性を把握した時点で、
予め(業者の)リスクを低減するものだから、各店頭FX業者のリスク管理上必要なら適切な対応をとるべきと提言しています。

 

ゼロカットシステムの導入について

検討会では、海外FX業者では当たり前のゼロカットシステムの導入も検討されたようです。

検討会の報告書の該当部分はこんな感じ…

④ 顧客の損失を限定する規制
ドイツ及びフランスでは顧客の預託した証拠金を上回る損失は店頭FX業者に転嫁する規制(Negative Balance Protection)が導入されており、我が国においても導入を検討すべきとの意見があった。

他方、この規制については、顧客は証拠金を上回る損失が発生してもそれを負う必要がないことから、顧客が損失の可能性を顧みずにリスクの高い投資を行うこと(モラルハザード)を誘引してしまうといった指摘のほか、未収金を負うことを嫌う店頭FX 業者が恣意的なスプレッドの拡大等によりロスカット取引を発動させるインセンティブが増してしまうといった指摘もあり、導入については、欧州等における実施状況も踏まえつつ、なお慎重な検討が必要であると考えられる。

引用元:金融庁「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」報告書より

要旨をまとめると…

ドイツおよびフランスでは、トレードによって顧客の口座残高がマイナスになった場合、
そのマイナス分はFX業者のリスクとなり、顧客に追証を請求することは認めないルール(規制)がある。

しかし、我が国でこの規制を導入することに関しては慎重な検討が必要である。

なぜ、慎重な検討が必要かというと、理由として以下の二点があげられる。

  1. 個人投資家が、損失を顧みないでリスクの高い投資を行う(モラルハザード)を誘因する可能性がある。
  2. 店頭FX業者が、未収金を追うことを嫌って、恣意的なスプレットの拡大等によってロスカット取引を発動させるインセンティブが増大する。

…ということのようですね。

でも、普通に考えれば、1のモラルハザード云々は、個々の投資家の個人的な問題でしょうし、
そもそも、現状制度で追証があることがモラルハザードに寄与しているとは思えないんですけどね。

2については、それこそ監督官庁が、適切な取り締まりをすべき事項だと思うんですがw

なんというか…
二つとも、まともな理由になってないと思うのは管理人だけでしょうか?

ゼロカットシステムは、欧州を中心に個人投資家保護のために導入されているルールですよね?

まぁ、考えてみれば…

店頭FX業者の決済リスク(破たんリスク)を回避することを検討する会だから、
この検討会が、店頭FX業者のリスクを増やすルールの導入に肯定的な結論を出すわけがないかw

それはともかく、我々個人投資家の保護より、
店頭FX業者保護に腐心している国の規制で運営されている業者でトレードなんかしたくないですよね^^;A

 

まとめ

  • レバレッジ10倍規制は、今回は見送りです。
  • 国内FX業者の自己資本・ストレステストの拡充がされる

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